IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41mmを実機レビュー 飛べるからといって、飛ばなければならないわけではない。

空を飛ぶことはロマンチックなことだった。乗客は最高の服(そして最高の時計)を身に着けて飛行機に乗り、パイロットも腕にこだわりをもっていた。飛行機の黄金時代といえば、ロレックスのGMTマスターが思い浮かぶ。コスモポリタンでジェットセットな雰囲気がある。しかし、パイロットウォッチには、より厳格な伝統があり、我々がIWCから連想するのは、そうしたパイロットウォッチである。IWCのパイロット・ウォッチコレクションは、戦闘機パイロットの伝統を受け継いでおり、その美学を今日まで継承している。

 2021年のWatches & Wondersで、IWCは新しい(より小さい)41mmサイズのパイロット・ウォッチ・クロノグラフを含むパイロット・ウォッチコレクションの新作を多数発表した。意外だったのは、新たにブルーとグリーンの2種類のダイヤルが加わったこと。プティ・プランスコレクションを除いて、IWCのパイロットウォッチは厳格で真面目なものだからだ。ダイヤル全体に散りばめられた色が、この時計に黄金時代の輝きを与える。この時計は、上官が着けても、下士官が着けても違和感がないと思う。

 41mmというサイズは、この時計にとって有利に働く。サイズが小さくなったことで、装着性と汎用性が大幅に向上した。私の手首周りは約18.5cmあるが、36~42mmのサイズに惹かれることが多い。そうなると、これまでのモデルは候補から外れてしまうのだ。過去に大型のパイロット・ウォッチ・クロノグラフを着用したことがあるが、43mmというケースサイズは巨大ではないものの、時に扱いにくいと感じることがあった。新しいサイズはそれを変えてくれた。

 IWCは、新しいクイックチェンジシステムを採用した。ストラップ(私の場合はハンサムなブルーのレザーストラップ)の着脱は、裏側のプッシュボタン式フックシステムを使ってわずか数秒で行うことができる。私は普段はブレスレット派だが、このストラップはとても素晴らしい。ダイヤルも同様だ。私が最も驚いたのは、ブルーの色合いである。影になるとダークネイビーに近い色に見え、光の下ではサンレイ仕上げが光を放つ。また、ダイヤルの赤がアクセントになっており、意外な遊び心が感じられる。

 この時計と一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、世界を旅しているような気分になってきた。2年間飛行機に乗っていない今、それは不思議な感覚だ。見た目にも何かがある。コスモポリタンなのだ。ダイヤルの下に十分な機能を備えているが、その機能を全て無視して、ただ時間を知らせる(さらに曜日や日付、クロノグラフのデータも表示するのはお分かりだろう)時計として身に着けるだけで、何か自由な感じがする。この時計を着けて旅をする感覚に一番近かったのは、ディナーに出かけることだった。しかし最近では、家を出るだけで壮大なサファリのような気分になる。

 告白すると、私はムーブメントを眺めることはほとんどない。私はダイヤルを見るのが好きで、IWCは世界で最も興味深いダイヤルを作っていると思う。しかし、今回のケースでは、裏側をチェックする価値がある。それは、ポルトギーゼに搭載されているのと同じ、コラムホイール式のキャリバー IWC 69385だ。

 パイロット・ウォッチ・クロノグラフはスリムな時計ではないし、そうあるべきでもない。このクロノグラフは、間違いなくあらゆる種類の……、つまりフライト関連の時間を計ることができるだろうが(あなたが推測するように、私は全くもってパイロットではない)、レストランで料理を注文してから受け取るまでの時間を計るのにも十分役立つ。ツールウォッチとしては、急激に圧力が低下しても風防が所定の位置に留まるように設計されている。私の場合は、ワインの飲み過ぎによる気圧の低下を想定している。

 このIWCのパイロット・ウォッチ・クロノグラフは、真面目な顔をしたフリーガーの精神を取り入れつつ、晴れやかさを加えている。それは、グリーンと(今回の場合は)ブルーのダイヤルがそうさせており、新しい考え方になったということだ。小ぶりなケースや新しいダイヤルなど、ちょっとした調整やアップグレードが大きな効果を発揮することがあるのだ。